海運ウィークリー

海運ウィークリー 2026年9月3日|コンテナ運賃と主要船社の動き

2026年8月27日〜9月3日の週は、コンテナ運賃の続落と西アフリカ向け割増の拡大、そして Hapag-Lloyd による ZIM 買収の失速が重なった一週間だった。Drewry の世界コンテナ指数(WCI)は40フィートあたり4,473ドルと3週連続で下落する一方、ナイジェリアのラゴス(アパパ)港では沖待ちが14〜21日と世界最悪の水準にある。運賃が下がっても港側のボトルネックは解消しておらず、日本発の輸出では「安くなった運賃」より「読みにくくなったリードタイム」への備えが要る週である。

今週の要点

  • Hapag-Lloyd × ZIM に規制の逆風。イスラエル政府の「ゴールデンシェア」を審議する8機関の会合が9月9日に延期され、過半数が反対姿勢と報じられた。ブラジルの CADE も南米向け3航路で本格審査を開始している(審査期限は2027年3月末)。
  • MSC が1,000隻に到達し、創業家が事業を承継。創業者 Gianluigi Aponte 氏(85)が息子の Diego 氏・娘の Alexa 氏へ経営を継承。同時に新造船「MSC Migsan」の就航で、コンテナ船社として世界初の1,000隻運航を達成した。
  • 西アフリカ向けにドライ貨物の PSS が新設。CMA CGM が中国発西アフリカ向けのドライコンテナに 300ドル/TEU のピークシーズンサーチャージを9月8日発効で新設。従来のリーファー限定割増(100ユーロ/TEU、9月1日発効)とは別枠である。
  • 運賃は続落、ラゴスは世界最悪の滞船。Drewry WCI は4,473ドル(前週比 ▼1%)で3週連続の下落。ラゴス(アパパ)は14〜21日の沖待ちで世界最悪、ガーナのテマも5〜7日の遅延が続いている。

コンテナ運賃と市況

項目 水準 前週比
Drewry WCI 総合指数(40ft) 4,473ドル ▼ 1%
上海 → ジェノヴァ 4,866ドル ▼ 2%
上海 → ロッテルダム 4,287ドル ▼ 3%
ラゴス(アパパ/ナイジェリア)沖待ち 14〜21 日 高止まり
テマ(ガーナ)遅延 5〜7 日 高止まり
アビジャン(コートジボワール)滞船 3.1 日 中位
ブランクセーリング(W36-40、東西基幹) 45 便 約 6%

指数の下落はトランスパシフィックとアジア〜欧州が牽引しており、地中海向けはスエズ復帰の影響を最も受けている。北欧州向けも軟調で、上海 → ロッテルダムは前週比 ▼3% と、上表の3航路では最も下げ幅が大きい。日本発の欧州向け運賃はこの指数とは別建てだが、東西基幹航路の需給を映す指標としては参考になる(日本発ロッテルダム航路)。一方でラゴスの滞船は貨物の一極集中、テマはバース不足・クレーン故障・ヤード混雑、アビジャンは地域取扱量の強さと停電がそれぞれ要因とされ、いずれも運賃ではなく港側の制約である。

西アフリカ向けのリードタイムはどう見積もればよいか?

今週時点では、ラゴス(アパパ)港が沖待ち14〜21日で世界最悪の水準、ガーナのテマ港が5〜7日、コートジボワールのアビジャン港が3.1日の滞船となっている。つまり西アフリカ向けは、船社が公称するトランジットタイムに港側の滞船分を上乗せして読む必要がある。港ごとの標準的な所要日数は航路一覧で確認できる。

船社別の動き

MSC動きあり

創業者 Gianluigi Aponte 氏(85)が息子の Diego 氏・娘の Alexa 氏へ経営を継承すると発表した。あわせて中国・舟山長宏造船から引き渡された11,480TEU型「MSC Migsan」の就航により、コンテナ船社として世界初の1,000隻運航に到達している。アジア〜欧州ではスエズ経由の通航を継続し、バブ・エル・マンデブ海峡の通過時に AIS を切る運用が引き続き標準となっている。8月にはイラクのウンムカスル港沖で「MSC Sariska V」が2発の飛翔体を受けた(乗員は全員無事)。黒海・ノヴォロシースク発着の新規ブッキング停止も継続中である。

Maersk動きあり

紅海ルートの一部再開を受け、インド亜大陸発サービスの緊急コンティンジェンシー・サーチャージ(ECS)を9月発効で引き下げた。同時に燃料・ハンドリング関連の新サーチャージを導入し、9月上旬から順次適用を開始する。8月にはロッテルダムの Maasvlakte II(MV2)で30度を超える猛暑によるゲート閉鎖が断続的に発生し、同社の運航アップデートではテマ・アビジャン向けの遅延も明示された。ホルムズ海峡周辺の新たな緊張は業界のリスク要因として意識されている。Q2決算は増収増益で、8月13日に通期ガイダンスを上方修正済み。

CMA CGM動きあり

中国発西アフリカ向けのドライコンテナに、9月8日発効(積地基準)で 300ドル/TEU のピークシーズンサーチャージ(PSS)を新設した。西アフリカ向けの割増が初めてリーファー限定を離れ、ドライ貨物にも設定された点が今週の大きな変化である。9月1日には西アフリカ向けリーファーに 100ユーロ/TEU の PSS(北欧州・バルト・スカンジナビア・西地中海・アドリア発が対象)、北欧州発紅海向けに 500ドル/コンテナ の PSS が発効。危険品(IMDG)については米国発ジェッダ・ポートスーダン・マッサワ向けに 5,000ドル の追加割増が9月1日から加わった。9月20日には北欧州〜米国向け PSS の改定(20ft 1,000ドル、40ft・40HC・45ft 2,000ドル)を予定する。2026年は船腹過剰と需要の弱さで厳しい年になると警告する一方、上期は +235,500TEU(+5.7%)とトップ10で最速の船隊拡大を続けている。

COSCO動きあり

8月28日、COSCO SHIPPING Ports の2026年上期決算を発表した。純利益は +28.5% の2億3,370万ドル、売上は +12.3% の9億530万ドル、総取扱量は +7.9% の8,015.7万TEU。第1回中間配当は1株あたり2.360米セントを決定している。Development・International・Specialized Carriers など他のグループ会社も同日前後に取締役会を開催し中間決算を承認した。コンテナ船事業セグメントを含む持株会社本体の詳細数値は次号でフォローする。

Hapag-Lloyd注視

ZIM 買収を審議するイスラエル政府8機関の会合が9月9日に延期された。ZIM には「ゴールデンシェア」があり、24%を超える株式売却には政府の拒否権が及ぶ。海運港湾庁を中心に「新生 ZIM が Hapag-Lloyd に過度に依存する」との懸念から、過半数が反対姿勢と報じられている。Hapag-Lloyd はイスラエルの FIMI を関与させ、イスラエル籍船16隻の運航継続と雇用保証を含む修正案を提示済みだが、決着していない。ブラジルの CADE も南米東岸向け3航路(北米発・中米カリブ発・南米西岸発)で両社の合算シェアが基準を超えるとして本格審査(full-form review)に入り、審査期限は2027年3月末までとなっている。8月13日発表のQ2決算は売上58億ドル(前四半期比 +19%)と回復し、通期グループEBIT見通しを1〜11億ドルへ引き上げた一方、上期は1億5,190万ユーロの純損失を計上した。

ONE動きあり

インド・中東〜東アフリカに新サービス IMM/IMD を開始した。それぞれケニアのモンバサ、タンザニアのダルエスサラーム向けの専用ループで、東アフリカ航路の増強が続いている。サーチャージ面では、9月11日にトランスパシフィック東行き(TPEB)の中国発ピークシーズンサーチャージを改定、9月15日にロサンゼルス港 Yusen Terminal(YTI)着の鉄道インターモーダル貨物へリハンドル料を新設、9月16日に緊急燃料サーチャージ(EFS)の水準を改定する。8月には通期利益見通しを3億ドルから9億ドルへ大幅に上方修正済み。

Evergreen動きなし

今週はサーチャージ・サービス改編・決算に関する新規リリースを確認できず、運賃・サービス面では動きなし。設備投資面では、Inmarsat の衛星通信 NexusWave を台湾船社として初めて全船隊へ導入すると発表した(乗組員の福利厚生とサイバーセキュリティ強化が目的で、運賃・決算とは別枠の話題)。株価は8月24日時点で250.50台湾ドル、直近4週間で -23.1% と軟調に推移している。

HMM動きあり

ガルフ〜インド〜東アフリカ(GIA)サービスを単一ループから2ループ体制へ増強し、9月から運用を開始する。インド〜東アフリカ間のスケジュール信頼性と接続性の向上が狙い。船隊戦略も転換し、2030年のコンテナ船腹目標を155万TEUから147万TEUへ引き下げる一方、隻数は130隻から166隻へ増やす(=小型化・多頻度化)。13,000TEU級10隻超の新造を保留し、Suezmax・石油タンカー・VLGC・LNG船などエネルギー輸送へ資源を振り向ける。上期決算は売上6兆1,210億ウォン、純利益7,650億ウォン、営業利益率10.2%。Q2は増益だが、上期の純利益は前年同期比 -37% となった。

Yang Ming動きあり

9月2日、韓国の Hanwha Ocean に LNG 二元燃料の13,000TEU型6隻を新規発注した。アンモニア推進への転換対応も設計に含み、2028〜2029年に順次竣工してアジア〜北米・地中海の東西基幹航路へ配船する予定。1〜6月期の純利益は71億7,000万台湾ドルで、関税政策の変化とエネルギーコスト上昇が需要の前倒しを招き、アジア〜欧州・トランスパシフィックの運賃を下支えしたと説明している。既発注の HD 現代重工 LNG 二元燃料15,500TEU型5隻も2026年から順次竣工中。

ZIM注視

買収承認を審議するイスラエル政府8機関の会合が9月9日に延期された(詳細は Hapag-Lloyd の項を参照)。同じ9月9日は1株 0.06ドル の配当支払日でもある(権利落ち日は9月2日)。Q2決算は調整後EPS 0.64ドル で市場予想を上回り、売上は前年同期比 +9% の17億8,000万ドル。新CEOには Eli Glickman 氏の退任にともない Chen Lichtenstein 氏が就任している。

Wan Hai(参考・トップ10圏外)動きあり

上海外高橋造船に新造船8隻を追加発注した(総額約10億ドル規模)。既発注分(黄埔文冲の6,000TEU型4隻、外高橋の9,200TEU型2隻ほか)と合わせ、受注残は50隻・約50万TEUに拡大している。四半期利益は前年同期比で大幅な増益となっており、太平洋航路の年間契約運賃は+14%を目標に掲げる。一方で定時到着率は伸び悩んでおり、スケジュール信頼性は引き続き課題である。

荷主・フォワーダー向けの実務ポイント

  • 運賃は下がっても、西アフリカのボトルネックは港側にある。ラゴス(アパパ)は14〜21日、テマも5〜7日の遅延が常態化しており、この方面の ETA は船社の公称日程に対して1〜3週間の余裕を見て買主へ案内したい。日本発アパパ航路や日本発テマ航路のリードタイムも、見積り時点の日数だけで読まないこと。
  • 滞船が伸びるとフリータイム超過のリスクも上がる。沖待ちが2〜3週間に及ぶ港では、超過保管料・機器留置料の発生確率が跳ね上がる。起算日の定義と延長交渉は積み前に固めておきたい(デマレージとディテンションの違い)。
  • サーチャージは「リーファー限定」から広がりうる。今週 CMA CGM が中国発西アフリカ向けのドライにも PSS を設定したことで、この方面はドライ貨物にも割増を掛けうるという前例ができた。日本発を含む他のアジア発地へ波及しないか、見積の有効期限と正式タリフで都度裏取りするのが安全である(海上運賃の内訳と付帯費用)。
  • スエズ復帰でスペースの読みが難しくなる可能性。アジア〜欧州へ船腹が吸い戻されると、喜望峰経由の航路はスペース確保がさらに読みにくくなりうる。W36〜40 には45便(約6%)のブランクセーリングが予定されており、9月以降のブッキングは早めに押さえておきたい(ETD・ETA・カットオフの読み方/ブッキングの流れ)。
  • 東アフリカ向けは選択肢が増えた。ONE の IMM/IMD と HMM の GIA 2ループ化がいずれも9月から動くため、モンバサ・ダルエスサラーム向けは複数船社で比較照会しやすい局面になっている。
  • 船隊の「小型化・多頻度化」は中小ロットに追い風。大手が大型船の追加発注を絞り隻数を増やす方向へ動いているのは、多仕向地・中小ロットの荷主にとって中期的にプラスに働く。船腹が逼迫する局面でスペースを確保する手段としては、自社所有コンテナの活用も選択肢になる(SOCコンテナ/SOCとCOCの違い/コンテナ不足への備え)。

来週の注目

  • 9/8CMA CGM の中国発西アフリカ向けドライ PSS(300ドル/TEU)が発効。他のアジア発地へ拡大しないかが焦点。
  • 9/9Hapag-Lloyd × ZIM 買収を審議するイスラエル政府8機関の会合。成立・不成立のいずれでも ZIM のサービス網が変わりうる分岐点。
  • 9/11ONE のトランスパシフィック東行き(TPEB)中国発ピークシーズンサーチャージ改定。
  • 9/15ONE のロサンゼルス港 Yusen Terminal(YTI)着 鉄道インターモーダル貨物リハンドル料が新設。
  • 9/16ONE の緊急燃料サーチャージ(EFS)水準の改定。
  • 9/20CMA CGM の北欧州〜米国向け PSS 改定(20ft 1,000ドル、40ft・40HC・45ft 2,000ドル)。
  • 継続COSCO SHIPPING Holdings 本体(コンテナ船事業セグメント)の中間決算詳細。
  • 継続ブラジル CADE による Hapag-Lloyd × ZIM の審査。期限は2027年3月末で、南米東岸3航路のシェア是正措置の内容が焦点。
  • 継続MSC・Maersk 以外の船社によるスエズ復帰宣言。追随のペースが運賃を左右する。

出典

  1. Drewry — World Container Index(2026年8月27日発表)
  2. Drewry — Cancelled Sailings Tracker(W36-40のブランクセーリング、2026年8月28日発表)
  3. Hylios — Lagos port congestion crisis
  4. Portcast — Abidjan port congestion data
  5. Greathensen — Africa shipping rates, Aug 2026
  6. MSC Newsroom
  7. Splash247 — MSC succession & 1,000-ship milestone
  8. Maersk — Asia Pacific market update
  9. Ad Hoc News — Maersk new fuel and handling surcharges
  10. Ad Hoc News — Maersk Red Sea ECS reduction
  11. Container News — CMA CGM West Africa / South America surcharges
  12. Container News — CMA CGM Red Sea / South Africa PSS
  13. Container News — CMA CGM dangerous goods surcharges
  14. Container News — CMA CGM North Europe–US PSS
  15. Manila Times / PR Newswire — COSCO SHIPPING Ports 2026 interim results
  16. Freshplaza — COSCO SHIPPING Ports profit +28.5%
  17. gCaptain — Hapag-Lloyd’s ZIM takeover hits regulatory headwinds
  18. WorldCargo News — Hapag-Lloyd/ZIM deal in Israel
  19. MLex — Hapag-Lloyd/ZIM deal faces full review in Brazil
  20. The Loadstar — Pushback against liner consolidation
  21. MarineLink — Container shipping consolidation
  22. ONE — Updated East-West service network
  23. WorldCargo News — ONE lifts full-year outlook
  24. Evergreen Line — Notices & News
  25. India Shipping News — HMM GIA two-loop expansion
  26. Freshplaza — HMM H1 2026 results
  27. Engine — Yang Ming orders six LNG dual-fuel vessels
  28. Baird Maritime — Yang Ming H1 2026 profit
  29. Simply Wall St — ZIM Q2 beat
  30. Splash247 — Wan Hai の新造船8隻発注と受注残50隻
  31. The Loadstar — Wan Hai、太平洋航路の年間契約運賃+14%を目標

本記事は、各社の公表資料および報道をもとに OCEAN FREIGHT JAPAN 編集部がまとめたものです(対象期間:2026年8月27日〜9月3日)。運賃・サーチャージの水準や適用条件は発表後に変更される場合があり、発地・貨物・契約条件によって実際の適用と異なることがあります。実務での適用可否は、必ず各船社の正式タリフおよび見積でご確認ください。