海運ウィークリー 2026年9月17日|アライアンスでスエズ判断が分かれた
2026年9月10日〜9月17日の週は、紅海・スエズをめぐる判断がアライアンスごとに分かれた一週間だった。Gemini協調(Maersk・Hapag-Lloyd)は9月14日、さらに4サービスを喜望峰からスエズ経由へ切り替えると発表し、初便の船名と日付まで公表している。一方の Ocean Alliance(CMA CGM・COSCO・Evergreen・OOCL)は、アジア〜欧州7ループとアジア〜地中海4ループを喜望峰経由のまま維持したままだ。同じアジア〜欧州でも、どの船社を使うかで経由地と所要日数が変わる局面に入った。運賃は総合指数こそ横ばいだが、太平洋が上昇しアジア〜欧州が続落と、中身は東西で逆に動いている。
今週の要点
- Gemini が4サービス追加でスエズへ。9月14日、Maersk と Hapag-Lloyd が AE5・AE11・AE12・ME2 を喜望峰からスエズ経由へ切り替えると発表。既存の AE15・AE19 と合わせて6本になる。初便は AE11 の Antonia Maersk が9月19日タンジュンペラパス発、AE5 の Marchen Maersk が9月21日、ME2 の Cornelia Maersk が9月24日。
- Ocean Alliance は喜望峰を維持。アジア〜欧州7ループとアジア〜地中海4ループについて、スエズ経由の代替案は用意しているものの、切り替え時期は示していない。アライアンス間で方針が割れた形になる。
- Hapag-Lloyd × ZIM は改善案を9月末に提出。イスラエル政府との協議を経て前進した。外資1社が政府へ届け出る必要が生じるしきい値を24%から10%へ引き下げ、FIMI はイスラエル国外に上場しないと確約し、ZIM Israel(16隻)がゴールデンシェアに関する責任を拡大して担う。
- 運賃は総合横ばい、中身は分裂。Drewry WCI は2週連続で横ばいの4,476ドル。ただし上海 → ロサンゼルスが +2%、上海 → ニューヨークが +1% と太平洋が上昇した一方、上海 → ジェノヴァは ▼3%、上海 → ロッテルダムは ▼2% でついに4,000ドルを割った。
コンテナ運賃と市況
| 項目 | 水準 | 前週比 |
|---|---|---|
| Drewry WCI 総合指数(40ft) | 4,476ドル | ± 横ばい |
| 上海 → ロサンゼルス | 7,352ドル | ▲ 2% |
| 上海 → ニューヨーク | 9,726ドル | ▲ 1% |
| 上海 → ジェノヴァ | 4,216ドル | ▼ 3% |
| 上海 → ロッテルダム | 3,997ドル | ▼ 2% |
| アビジャン(コートジボワール)滞船 | 4.25 日 | 高止まり |
| テマ(ガーナ)滞船 | 5.78 日 | 悪化 |
| ラゴス(ティンカン/ナイジェリア)滞船 | 2.0 日 | やや改善 |
総合指数が動かなかったのは、太平洋の上昇とアジア〜欧州の下落が相殺した結果であり、実態は横ばいではない。スエズ復帰で船腹が戻るアジア〜欧州と、そうでない太平洋の差がそのまま数字に出ている(日本発ロッテルダム航路)。西アフリカではテマの滞船が7日平均5.78日へ悪化し、リーファーヤードのプラグ稼働率は100%に達した。アビジャンは7日平均4.25日だが窓船の遅延は最大8日で、ターミナルの復旧計画には6〜7週間を要する見込みである。一方ラゴスはアパパで最大24時間の荷役遅延が続くものの、ティンカンは7日平均2.0日まで落ちている。
アライアンスで経由地が違うと、何が変わるのか?
スエズ経由と喜望峰経由では、アジア〜欧州のトランジットタイムが片道でおおむね10日前後変わる。Gemini が4サービスを切り替えたことで、同じアジア〜欧州でも船社によって所要日数の前提が異なる状態になった。Ocean Alliance は代替案を用意しつつも切り替え時期を示していないため、この差はしばらく続く可能性が高い。
実務上の影響は2つある。ひとつは相見積もりの比較が運賃だけでは足りなくなったこと。同じ仕向港でも経由地と所要日数を並べて見なければ、安いほうが実は2週間遅い、ということが起こりうる(ETD・ETA・カットオフの読み方)。もうひとつは喜望峰経由の船腹をめぐる競合で、アフリカ向けの航路は、喜望峰を回り続ける船社と同じ海域・同じ船腹を分け合う関係が続く(航路一覧)。
船社別の動き
MSC動きなし
今週分の新規発表は確認できなかった。8月24日に発表したアジア〜欧州4サービス(Jade・Albatros・Tiger・Himalaya)のスエズ経由は継続しており、黒海・ノヴォロシースク発着の新規ブッキング停止も続いている。
Maersk動きあり
9月14日、Hapag-Lloyd と共同で Gemini協調の4サービスを喜望峰からスエズ経由へ切り替えると発表した。対象は AE5(アジア〜北欧州)、AE11・AE12(アジア〜地中海)、ME2 で、すでにスエズ経由の AE15・AE19 と合わせて6本になる。初便の日程も公表されており、AE11 は Antonia Maersk がタンジュンペラパスを9月19日発、AE5 は Marchen Maersk が9月21日、ME2 は Cornelia Maersk が9月24日。AE12 の時期は追って公表される。前週に明らかにした「喜望峰回りの貨物の30%超をすでにスエズへ戻した」に続く動きで、紅海の安全情勢が未解決のなかでの前倒しとなる。
CMA CGM動きあり
9月21日発効で、北欧州・地中海・北アフリカ発の豪州・ニュージーランド向けに緊急スペース割増を新設する。ドライ 250ドル/TEU、リーファー 400ドル/TEU。アフリカ向けのピークシーズンサーチャージは、中国発西アフリカ 300ドル/TEU(9月8日発効)、東南アジア発西アフリカ 500ドル/TEU、中国発モザンビーク 200ドル/TEU、華南発タマタブ(マダガスカル)200ドル/TEU がいずれも継続中で、ドライ・リーファーの両方が対象、短期契約の貨物に適用される。なお Ocean Alliance の一員として、アジア〜欧州・地中海は喜望峰経由を維持する側にいる。
COSCO動きあり
Ocean Alliance(CMA CGM・COSCO・Evergreen・OOCL)は、アジア〜欧州7ループとアジア〜地中海4ループを喜望峰経由のまま維持している。11サービス分のスエズ経由の代替案は用意されているが、切り替え時期は示されていない。同アライアンスの年間ネットワーク「Day 10」は41〜42ループ・394隻・約530万TEU規模である。COSCO単独での新規発表は今週確認できなかったが、HMM の東アフリカ新サービス GIA には共同運航社として参加している。
Hapag-Lloyd注視
ZIM 買収の改善案について、イスラエル政府側との協議を経て前進した。9月末までに FIMI と共同で改善案を提出する。内容は、①外資1社が政府へ届け出る必要が生じるしきい値を24%から10%へ引き下げ、②FIMI が ZIM Israel をイスラエル国外に上場しないと確約、③ZIM Israel(16隻)がゴールデンシェアに関する責任を拡大して担い、イスラエルとアジアを含む主要市場との直航を維持する、の3点である。反対の中心は依然として国家安全保障で、ZIM の労組やカッツ国防相らが反発を続けている。あわせて Maersk と共同で Gemini 4サービスをスエズ経由へ切り替える。
ONE動きあり
9月11日にトランスパシフィック東行き(TPEB)の中国発ピークシーズンサーチャージを改定し、9月15日にはロサンゼルス港 Yusen Terminal(YTI)で揚げる鉄道インターモーダル貨物にリハンドル料を新設した。いずれも前号で予告していたとおりの実施である。10月1日には欧州環境サーチャージの第4四半期分が発効する予定で、アジア・オセアニア → 欧州が110〜420ドルなど全18航路が対象、今回から英国発着の全貨物にも適用が拡大される。インド・中東〜東アフリカの IMM/IMD サービスは運用を継続している。
Evergreen動きなし
4号連続で動きなしとなった。公式通知にも、9月7日付の運航アドバイザリー以降の新規は確認できなかった。Ocean Alliance の一員として喜望峰経由を維持する側にいる。台湾勢は総じて増収基調にあるものの、戦争起因の収益が燃料・保険・迂回・船隊拡張といったコスト構造を覆い隠しているとの指摘も出ている。
HMM動きあり
東アフリカ向け新サービス GIA(Gulf–India–East Africa)の初便が、ナバシェバを出港する週に入った。約2,800TEU型5隻を投入し、寄港順はナバシェバ(インド)→ ムンドラ(インド)→ ダルエスサラーム(タンザニア)→ モンバサ(ケニア)→ ナバシェバ。COSCO SHIPPING・PIL・INTERASIA LINES との4社共同運航で、インドと中央アジアの貨物が集まるナバシェバ・ムンドラを起点に東アフリカへ延ばす設計である。将来は湾岸地域まで寄港を伸ばす計画も示されている。
Yang Ming動きなし
今週分の新規発表はない。株価は9月15日時点で +2.04%。Hanwha Ocean に発注した LNG 二元燃料 13,000TEU 型6隻(2028〜2029年竣工)と、HD 現代重工の 15,500TEU 型5隻は、いずれも案件として進行中である。
ZIM注視
Hapag-Lloyd/FIMI による改善案が9月末に提出される見込みである。成立すればイスラエル関連事業は16隻とともに新会社「ZIM Israel」(FIMI 保有)へ切り出される構造となる。ZIM 側は既存の合併契約に沿って行動し、規制当局の審査に協力していると説明している。労組の反対は継続している。
Wan Hai動きなし
今週分の新規発表はない。受注残は50隻・約50万TEUのままである。
荷主・フォワーダー向けの実務ポイント
- 相見積もりは運賃だけで比べない。Gemini と Ocean Alliance で経由地の判断が分かれたため、同じアジア〜欧州でも船社によってスエズ経由と喜望峰経由が混在する。片道でおおむね10日前後の差が出るので、経由地と所要日数を必ず並べて比較したい(ETD・ETA・カットオフの読み方)。
- テマ向けは前提を引き下げる。ガーナのテマ港は滞船が7日平均5.78日へ悪化し、リーファーヤードのプラグ稼働率は100%に達した。ドライ貨物であってもリーファーが捌けない港はヤード全体が詰まるため、ETA は余裕を持って案内したい(日本発テマ航路)。
- アビジャンは10月中旬まで通常運転に戻らない前提で。窓船の遅延は最大8日、ターミナルの復旧計画には6〜7週間を要する見込みである。
- ラゴスは仕向港の選び方で差が出る。アパパは降雨とヤード混雑で最大24時間の荷役遅延が続く一方、ティンカンは7日平均2.0日まで落ちている(日本発アパパ航路)。
- 滞船が伸びる港ではフリータイム超過に注意。待ち時間が1週間に近づく港では、超過保管料・機器留置料が発生する確率が上がる。起算日の定義と延長交渉は積み前に固めておきたい(デマレージとディテンションの違い)。
- 西アフリカ向けPSSの発地は段階的に広がっている。CMA CGM は中国発300ドル/TEU に加え、東南アジア発を500ドル/TEU に設定している。日本発は現時点で対象外だが、見積取得時に西アフリカ向けPSSの有無を確認しておくのが安全である(海上運賃の内訳と付帯費用)。
- 東アフリカ向けは選択肢が実際に動き出す。HMM の GIA が今週ナバシェバから初便を出す。4社共同運航でスペースは取りやすいとみられるが、2,800TEU級のフィーダーで起点がインドのため日本発は積替えが前提となる(モンバサ/ダルエスサラーム)。
- 欧州航路の下落局面は続いている。上海 → ロッテルダムは4,000ドルを割った。スペース確保を優先するなら、運賃が下がる局面こそ早めのブッキングが効く(ブッキングの流れ/SOCコンテナ/コンテナ不足への備え)。
来週の注目
- 9/19Gemini AE11 の初便 Antonia Maersk がタンジュンペラパスを出港。
- 9/21Gemini AE5 の初便 Marchen Maersk が出港。あわせて CMA CGM の欧州・北アフリカ発 豪州・NZ向け緊急スペース割増が発効。
- 9/24Gemini ME2 の初便 Cornelia Maersk が出港。
- 9月末Hapag-Lloyd/FIMI による ZIM 買収の改善案が提出される見込み。
- 9月第4週HMM の東アフリカ新サービス GIA 初便がナバシェバを出港。
- 10/1ONE の欧州環境サーチャージ 第4四半期分が発効(英国発着への適用拡大を含む)。
- 10月中旬アビジャン港の復旧計画(6〜7週間)の進捗。
- 継続Ocean Alliance がスエズ切り替えの時期を示すかどうか。示されれば喜望峰の船腹配置が一気に動く。
出典
- gCaptain — Maersk and Hapag-Lloyd accelerate return to Suez(2026年9月14日)
- Marine Insight — Maersk, Hapag-Lloyd resume more Suez Canal voyages
- Seatrade Maritime — Ocean Alliance network keeps Cape rerouting, details Suez options
- PortNews — Ocean Alliance maps “Day 10” network as carriers keep Cape routings
- Container News — OCEAN Alliance marks 10 years with “Day 10 Product”
- Globes — Hapag-Lloyd, FIMI to submit improved offer for ZIM
- Ctech — Hapag-Lloyd and FIMI to submit improved bid for Zim
- Maritime Executive — Hapag-Lloyd gets extension to rework bid for Zim
- The Loadstar — Hapag-Lloyd offers new proposals in bid to take over Zim
- DCN — World Container Index, 10 September 2026
- Drewry — World Container Index
- Container News — CMA CGM introduces new PSS from Asia to Africa trades
- Container News — CMA CGM emergency space surcharge on Europe–Oceania trade
- The Guardian (Nigeria) — CMA CGM China–West Africa PSS
- Kuehne+Nagel — Port operational updates(2026年9月2〜8日)
- Portcast — Abidjan port congestion
- Portcast — Lagos port congestion
- Logistics Manager — HMM launches Gulf–India–East Africa (GIA) service
- India Shipping News — HMM launches India–East Africa service
- Data Portuaria — HMM launches GIA route with five 2,800 TEU vessels
- Container News — ONE updates Europe Environment Surcharge for Q4
- ONE — Surcharge updates
- Global Maritime Hub — Container shipping capacity reaches 21.3 million TEU
- Seatrade Maritime — Container alliances still dominant
- MSC Newsroom
本記事は、各社の公表資料および報道をもとに OCEAN FREIGHT JAPAN 編集部がまとめたものです(対象期間:2026年9月10日〜9月17日)。運賃・サーチャージの水準や適用条件は発表後に変更される場合があり、発地・貨物・契約条件によって実際の適用と異なることがあります。実務での適用可否は、必ず各船社の正式タリフおよび見積でご確認ください。