海運ウィークリー

海運ウィークリー 2026年10月9日|西航スエズが実施され、Premier Alliance も折れた

2026年10月1日〜9日の週は、前号で「10月4日に実施されるか」と書いた西航スエズが実際に通った一週間だった。COSCO/OOCL の 24,200TEU 型 OOCL Spain が10月4日、AEU1/LL1(CMA CGM の FAL5)で2年以上ぶりの西航(アジア発)スエズ通航を実施した。さらに同じ週、最後まで喜望峰を守っていた Premier Alliance(ONE・HMM・Yang Ming)が FE1 と IOX/INX のスエズ復帰を発表し、これで主要3アライアンスすべてが動いたことになる。運賃はアジア〜欧州で13週連続の下落となり、Drewry WCI は4,351ドル。Drewry 自身が下げの理由を「想定より早いスエズ復帰」と明記した。アフリカ関連では、CMA CGM が中国発西アフリカ向けPSSを6日間で2段引き上げ、Maersk が欧州〜西アフリカのサービス網を10月から全面再編している。

今週の要点

  • 西航スエズが「予定」から「実施」になった。10月4日、24,200TEU 型 OOCL Spain が AEU1/LL1(Ocean Alliance の NEU1、CMA CGM の FAL5)で2年以上ぶりの西航スエズ通航を実施した。9月中旬以降の東航9〜10便に続く段階である。ただし FAL1・FAL3 は東航のみで、西航は依然として喜望峰経由のままであり、全面切替ではない。
  • Premier Alliance が折れた。ONE・HMM・Yang Ming は10月1日、FE1(東南アジア〜北欧州)と IOX/INX(インド亜大陸〜北欧州)のスエズ復帰を発表した。2024年1月に喜望峰へ移して以来初の切替で、切替船は ONE Continuity(8,110TEU)。レムチャバン発10月19日、初の西航スエズ通航は11月9日、ロッテルダム着は11月19日。ラウンドトリップは13週から11週へ短縮される。
  • 中国発西アフリカのPSSが6日間で2段上がった。CMA CGM は10月2日に10月15日発効分(Central 200ドル・North/South 400ドル/TEU)を発表した直後、10月8日に10月22日発効で Central 350ドル・North/South 550ドルへ再引き上げした。ギニア・コナクリは200ドルで据え置き。対象は中国および同特別行政区発で、短期契約のドライ・リーファーに適用される。
  • 復帰初便と紅海での至近弾が同じ10月4日だった。OOCL Spain が西航した同じ日、プロダクトタンカー Chrystal Sky(73,976DWT)がモカ南方60海里で複数の爆発に遭遇した。1発は船体から約100mの至近弾だったが船体は無損傷、乗組員も無事でそのまま航行を続けている。9月中は同海域で商船被弾の報告がゼロだったため、被弾の再開と西航の開始が重なった形である。

コンテナ運賃と市況

項目 水準 前週比
Drewry WCI 総合指数(40ft) 4,351ドル ▼ 2%
上海 → ロサンゼルス 7,624ドル ▼ 3%
上海 → ニューヨーク 10,220ドル ▼ 2%
上海 → ジェノヴァ 3,696ドル 横ばい
上海 → ロッテルダム 3,337ドル ▼ 2%
極東 → 北欧州(Xeneta、10月7日) 3,645ドル/FEU 7月1日比 ▼34%
極東 → 地中海(Xeneta、10月7日) 4,007ドル/FEU 7月1日比 ▼43%
欠便(アジア〜欧州、来週) 6 便 今週 5 便
欠便(太平洋、来週) 4 便 今週 11 便
スエズ通航(10月4日までの週) 1日平均 43 隻 前年同週 +4.9%
上海(中国)滞船 3.51 日 高止まり
寧波(中国)滞船 2.37 日 やや改善
テマ(ガーナ)滞船 5.8 日 改善(6.35日→)
アビジャン(コートジボワール)滞船 4.5 日 改善(6.80日→)
ダーバン(南アフリカ)滞船 7.0 日 悪化

総合指数は4,351ドルへ下げ、4航路のうち3つが下落、上海 → ジェノヴァのみ横ばいだった。アジア〜欧州は13週連続の下落で、Drewry は下げの理由を「想定より早いスエズ復帰が運賃維持の最大の脅威」と明記している(日本発ロッテルダム航路)。Xeneta の市場平均でも、極東 → 地中海は7月1日比で ▼43%、極東 → 北欧州は ▼34% と、下げ幅は地中海のほうが大きい。

ここで注意したいのは欠便の動き方である。来週のアジア〜欧州の欠便は6便(今週5便)、太平洋は4便(今週11便)で、国慶節明けで需要が落ちる局面なのに船腹が引っ込められていない。船社が供給を絞らないまま需要が落ちれば、10月後半から11月にかけて下げ余地が残ることになる。長期の運賃を今の水準で固定するより、有効期限を短めに取って更新で対応するほうが読みやすい局面である(海上運賃の構成)。

西アフリカの滞船は、3週ぶりに数字が掲載され、しかも改善していた。テマは6.35日から5.8日、アビジャンは6.80日から4.5日へ下がった(日本発テマ航路、日本発アパパ航路)。ただし「解消」と読むのは早い。港湾レポートはアビジャンについて「最大12日待ちの本船がある」と併記しており、荷役機材の不調・トラック不足・コンテナ滞留日数の高止まりという記述も変わっていない。平均が下がっただけで分散は大きいと見るべきである。コナクリ・ダカール・ラゴス・モンバサは今週も掲載がなく、9月16〜22日版が最新のままである(日本発ダカール航路、日本発モンバサ航路)。ラゴスについては、ナイジェリア港湾庁の2026年上期統計が在港日数の悪化(ティンカン島 4.4日 → 5.1日、ラゴス港複合 5.9日 → 6.1日)を示しており、搬出まで含めると20日を超える事例も報じられている。納期は本船ETAではなく搬出完了ベースで案内するのが安全である(デマレージとディテンション)。アフリカで今週最も厳しかったのはダーバンの7.0日で、Pier 1 の機材故障が原因とされている(日本発ダーバン航路)。

主要3アライアンスが揃った──荷主には何が起きるのか?

今週の本質は「1便が西航した」ことよりも、残っていた最後のグループが方針を変えたことにある。Premier Alliance(ONE・HMM・Yang Ming)は2024年1月以降、喜望峰経由を最も長く維持してきたグループだった。そこが FE1 と IOX/INX をスエズへ戻すと決めた。これで Gemini(Maersk・Hapag-Lloyd)、Ocean Alliance(CMA CGM・COSCO・OOCL・Evergreen)、Premier Alliance の3アライアンスすべてがスエズ側へ動いたことになる。

荷主・フォワーダーにとっての含意は3つある。

第一に、船腹が構造的に余る方向へ向かう。FE1 のラウンドトリップが13週から11週へ縮むということは、同じ週1便を維持するのに必要な船が2隻ぶん減るという意味である。喜望峰回りはスエズ経由より片道で10日前後長く、その差が船腹として市場に戻ってくる。スエズ通航は10月4日までの週で1日平均43隻(前年同週比 +4.9%)、4,000TEU超のコンテナ船は先週30隻が通航して2024年以来の最多となった。戻ってくる船腹は、下げている相場をさらに押す。

第二に、切替は「サービス単位」で起きるので、同じ船社でも所要日数が混在する期間が続く。Ocean Alliance は AEU1/LL1 の西航だけが動き、FAL1・FAL3 の西航は喜望峰のままである。Premier Alliance も FE1 と IOX/INX だけで、Yang Ming のアジア〜西地中海 MS2 は往復とも喜望峰経由のまま据え置かれた。サービス名や船社名ではなく、実際の寄港順とカットオフで確認する必要がある(ETD・ETA・カットオフの読み方)。

第三に、アフリカ向けは「船腹が緩む」話とは別の軸で動いている。アジア〜欧州の運賃が13週下がっている同じ週に、CMA CGM は中国発西アフリカ向けのPSSを2段引き上げ、Hapag-Lloyd はテマ向けリーファーに混雑チャージを新設した。幹線の下げがそのままアフリカ向けの下げになるわけではない。アフリカ向けは仕向国単位でサーチャージが動くため、見積は仕向国名を明示して取り直すのが前提になる。

船社別の動き

MSC動きあり

前号で予告していた FAK の中身が出た。極東 → 北欧州は基本港間で20ftドライ 3,150ドル・40ftドライおよび40HC 4,500ドルで、10月分の Global Fuel Surcharge 253ドル/TEU、ECA サーチャージ(地中海向け15ドル/TEU、北欧・バルト向け52ドル/TEU)を含む。適用は10月19日から、遅くとも10月31日までである。同じ10月19日から、アジア発の Piracy Risk Surcharge 55ドル/TEU と Suez Canal Surcharge 36ドル/TEU(合計91ドル/TEU)を地中海・北アフリカの約35港へ拡大する。デリンジェ、ポートサイド西、バルセロナ、ジェノヴァ、バレンシア、ナポリ、アルジェ、カサブランカなどが対象で、当面の間続く。基本運賃が13週下がっているのに、リスク系サーチャージは拡大している点は見積比較のときに押さえておきたい。国慶節では、アジア〜北欧州で週40・41に3便、アジア〜米東岸で週40・42に2便を欠便した。10月9日には、アジア〜南米東岸の Ipanema VSA を ONE との2社体制へ再編すると発表している(Hapag-Lloyd が3社協定から離脱、新体制の初便は2027年4月3日上海発)。

Maersk動きあり

アフリカ向けで今週最も実務に効く動きである。Maersk は10月から欧州〜西アフリカのサービス網を全面再編し、ポートサイド・ロメ・ポワントノワールを新たに組み込んだ。確定したローテーションは、WAF3 がポートサイド → アルヘシラス → タンジェ → ロメ → アビジャン → テマ → アパパ、WAF6 がポートサイド → タンジェ → アルヘシラス → テマ → アパパ → ポワントノワール。あわせて WAF2(アルヘシラス → タンジェ → ダカール)、WAF7(タンジェ → コナクリ)、WAF10(タンジェ → ヌアクショット → ヌアディブ)、WAF12(タンジェ → バンジュール)、WAF9B/C(アルヘシラス → レイションイス → リスボン → プライア → ミンデロ)が並ぶ。タンジェからはモンロビア(WAF5X)・フリータウン(WAF7X)の直航も維持される。注意すべきは、WAF3 のテマ・アパパ寄港が「西アフリカ発の輸出のみ」の扱いになる点で、テマ・アパパ向けの輸入貨物は WAF6 側で見る必要がある(日本発テマ航路、日本発アパパ航路)。積替えハブはアビジャン・ロメ・ポワントノワール・テマに集約され、ドゥアラ・マタディ・リーブルビル・ウォルビスベイ向けの接続が組み替えられた。WAF3・WAF6 の起点がポートサイドになったことは、この網がスエズ経由を前提に組まれていることを意味する。WAF6 は2026年7月にすでにサラーラ〜西地中海間を紅海経由へ戻しており、アジア発貨物をサラーラで積替える選択肢も提示されている。サーチャージ面では10月7日に西地中海・東地中海 → 米国・カナダへ PSS 250ドル/箱、10月15日から欧州 → 南アフリカ(モザンビーク除く)へ PSS を新設した。なお Gemini のスケジュール信頼性は北米西岸向け95.7%、東岸向け93.5%(業界平均は69.7%/71.5%)で、納期を詰めたい案件では選択の根拠になる。AE12 の初スエズ便 Umm Qarn は10月27日タンジュンペラパス発で変更はない。

CMA CGM動きあり

中国発西アフリカ向けのPSSを6日間で2段引き上げた。まず10月2日に、10月15日発効分として Central(ナイジェリア・コートジボワール・ベナン・赤道ギニア・ガーナ・トーゴ)200ドル/TEU、ギニア 200ドル、North(リベリア・セネガル・モーリタニア・ガンビア・シエラレオネ・ギニアビサウ・カーボベルデ・サントメプリンシペ)400ドル/TEU、South(アンゴラ・コンゴ・DRC・ナミビア・ガボン・カメルーン)400ドル/TEU を発表。続いて10月8日に、10月22日発効で Central を350ドル、North と South を550ドルへ再引き上げした(ギニア・コナクリは200ドルで据え置き)。対象は中国および同特別行政区発で、短期契約のドライ・リーファー。原産地が中国の貨物については上海航運交易所への届出が条件となる。あわせて極東発として、ダーバン 550ドル/TEU(10月8日発効)、ポートルイス 400ドル/TEU(10月15日発効)、モガディシュ 100ドル/TEU(10月15日発効、当面の間)を設定した。「中国発」と「極東発」で対象範囲が違うため、告知ごとに発地の表現を確認する必要がある(日本発ダーバン航路)。航路面では FAL1・FAL3 は東航のみスエズで、西航は喜望峰のままである。事業面では FedEx の契約物流部門の買収(14億ドル)を10月に完了し、10月6日に HD現代から13,000TEU 型の引渡を受け、10月7日には18,000TEU 型12隻へ Wärtsilä 製エンジンを採用すると発表した。

COSCO動きあり

前号で予定として報じた西航スエズを、10月4日に実施した。通航船は24,200TEU 型の OOCL Spain で、サービスは AEU1/LL1(Ocean Alliance の NEU1、CMA CGM の FAL5)。COSCO としては2年以上ぶりの西航スエズ通航であり、9月中旬以降に東航9〜10便をスエズへ移し終えた上での次段階にあたる。COSCO SHIPPING Lines は通航をさらに増やす検討を進めており、近く3隻が通航する予定とされる。スエズ運河庁の統計では2026年1〜8月のコンテナ船純トン数は7,210万トンで前年同期比 +54.2%。別件では COSCO SHIPPING Bulk が初のコンテナ定期を開設し、南沙 → ポートサイド(エジプト)→ ベンガジ・ミスラタ(リビア)を結ぶ。南沙からリビアまで最短21日である。北米側では地中海〜カナダ航路に参加し、OOCL は極東〜南米網を拡充した。一方でドイツ政府は、COSCO による独物流会社 Konrad Zippel の80%取得を安全保障上の理由で不許可とした。

Hapag-Lloyd注視

ZIM 買収は「決着」ではなく「長期化」に振れた。前号で報じた新規申請の期限10月6日は満たされず、Hapag-Lloyd は改善案を「今後数週間のうちにイスラエル当局へ提出・説明する」としている。会社側は2026年末のクロージング目標は維持している。10月2日には Habben Jansen CEO が「当局の懸念は当初案に対するもので、その後の大幅な改善を考慮していない」と反論した。改善案の内容は、イスラエル〜アジアの追加航路、イスラエル人海運人材への投資と専門性の国内保持、ZIM Israel 向けの新鋭船隊、ゴールデンシェアの強化で、価格は1株35ドル・総額42億ドルで据え置きである。さらに10月1日、ZIM 株の10%超を持つ株主グループが「重大な変更を伴う案は取締役会決議だけでなく株主総会の承認が必要」と要求した。実務面では10月5日からテマ(ガーナ)向けリーファーに Congestion Destination Surcharge 250ドル/TEU を新設しており(対象はアフリカ・アジア・大洋州・中東・インド亜大陸発)、港湾レポート上はテマの平均待ち日数が改善している一方で船社側はまだ混雑港として課金しているという温度差がある。10月15日からはルアンダ発の全世界向けに EIS 100ドル/箱(20ftドライ)。アジア〜南米東岸の Ipanema VSA からは離脱した。ブラジルCADEによる南米東岸3航路の審査は2027年3月末期限で並行継続中。

ONE動きあり

Premier Alliance(ONE・HMM・Yang Ming)のスエズ復帰を主導した。10月1日、FE1(東南アジア〜北欧州)と IOX/INX(インド亜大陸〜北欧州)をスエズ経由へ戻すと発表した。2024年1月に喜望峰へ切り替えて以来初の変更で、切替船は ONE Continuity(8,110TEU)。レムチャバン発は10月19日(10月17日とする報道もある)、初の西航スエズ通航は11月9日、ロッテルダム着は11月19日。ローテーションはレムチャバン → カイメップ → シンガポール → ロッテルダム → ハンブルク → ルアーブルで、ラウンドトリップは13週から11週へ短縮される(日本発シンガポール航路、日本発ロッテルダム航路)。なおアルヘシラスは2026年6月の ONE による再編以降 FE1 のローテーションから外れたままで、今回の復帰で戻ったわけではない。サーチャージ面では10月1日に OBS(ONE Bunker Surcharge)を改定、CMD(荷揚側コンテナ管理料)を15ドルから20ドル/箱へ引き上げ、欧州環境サーチャージの第4四半期分も発効した。10月8日からは北米のリーファー内陸燃料サーチャージを435ドルから625ドル(+44%)へ引き上げている。組織面では香港の東アジア本部をシンガポールへ統合し、ONE が51%を持つ Yusen Terminals がロサンゼルス港バース212-224の借地を2056年まで延長した。

Evergreen動きなし

運賃・航路の新規発表は7号連続でなかった。公式通知を確認したところ、10月分は米国向けの空コンテナ返却告知、カナダ感謝祭(10月12日)に伴うターミナル休業、Everport ロサンゼルスのゲート稼働(10月9日・10日・17日)といった域内オペレーション告知のみで、運賃・サーチャージ・航路に関する新規通知は確認できなかった。10月1日には ShipmentLink Mobile(スケジュール照会・貨物追跡・リリースステータス)をリリースしている。米国東岸・西岸 → アジアの輸出サービスには臨時便を追加投入した。押さえておきたいのは、10月4日の Ocean Alliance 西航初便が COSCO/OOCL 運航船であって Evergreen 運航船ではない点である。「アライアンスが動いた」ことと「Evergreen が動いた」ことは別で、Evergreen 運航船の西航スエズは依然として未公表である。FAL3 は CMA CGM 単独運航で、Evergreen はスロット側の参加にとどまる。

HMM動きあり

Premier Alliance の一員として FE1/IOX・INX のスエズ復帰に参加する(ONE の項を参照)。HMM 単独での追加発表はなく、運賃・サーチャージの新規発表も今週は確認できなかった。東アフリカの GIA(湾岸〜インド〜東アフリカ)は2ループ・6社体制で稼働を継続している。ローテーションはナバシェバ → ムンドラ → ダルエスサラーム → ナバシェバと、ナバシェバ → ムンバイ → モンバサ → ナバシェバの2本で、投入船型は2,300〜2,800TEU、週1便である。共同運航は HMM・COSCO SHIPPING・OOCL・Interasia Lines・PIL・ONE の6社で、どの社からでも同じ船のスペースを取れる。日本発はナバシェバでの積替えが前提となるため、東アフリカ向けの引き合いでは接続便の所要日数を先に確認しておきたい(日本発モンバサ航路、日本発ダルエスサラーム航路、ブッキングの流れ)。

Yang Ming動きあり

前号で「真剣に検討している」と報じたスエズ復帰が、1週間で実行に移った。10月1日、Premier Alliance として FE1 と IOX/INX のスエズ復帰に参加する。ただし重要な留保がある。今回の対象は FE1(東南アジア〜北欧州)と IOX/INX であり、アジア〜西地中海の MS2 は含まれていない。MS2 は釜山 – 上海 – 寧波 – 高雄 – 蛇口 – シンガポール –(喜望峰)– タンジェ – バレンシア – バルセロナ – ジェノヴァ – ラスペツィア – フォス –(喜望峰)– シンガポール – レムチャバンで、往復とも喜望峰経由のままである。喜望峰に最も長く船腹を置いているのがこのクラスであるため、次の節目は MS2 が動くかどうかになる。業績面では10月8日に9月の月次売上高を公表し、前年同月比 +69.9% の約217億台湾ドルとなった。繁忙期の需要と運賃の上昇が理由とされている。一方で2026年上期は売上が NT$845.8億(+0.5%)に対し粗利が ▼30.2%、営業利益が ▼42.2% と、通期での収益構造は一様ではない。

ZIM動きあり

10月6日、2026年通期の見通しを大幅に上方修正した。調整後EBITDA を20〜24億ドルから27〜30億ドルへ、調整後EBIT を7〜11億ドルから14〜17億ドルへ引き上げ、EBIT は実質ほぼ倍増となる。理由として需要の強さと運賃の推移を挙げている。株価は時間外で +4.8% と反応し、52週高値圏へ上昇した。ここが今週の市況の読み方として重要な点である。同じ週に Drewry WCI は13週連続の下落で4,351ドルまで落ちているのに、9月29日の Hapag-Lloyd に続いて ZIM も通期見通しをほぼ倍に引き上げた。2社が独立に同じ方向へ修正したということは、スポット指数と実際の成約水準の乖離が一時的な誤差ではないことを意味する。買収については、10月1日に10%超の株主グループが株主総会での承認を要求している。4月30日の株主総会では97.36%の賛成で当初案が承認されていたが、条件が変わるなら再決議すべきという主張である。業績が良くなるほど1株35ドルという価格の魅力は薄れるため、長期化の要因がまた一つ増えた形になる。9月13日就航のアジア〜南米東岸 ZIM Falcon Service(ZFS)は運航を続けている。

Wan Hai動きなし

今週分の新規発表はない。外高橋造船の11,000TEU 型6隻(1隻1.18〜1.24億ドル、メタノール/LNG 二元燃料、EEDI Phase III 対応)は進行中で、2026年の外高橋発注は計8隻、受注残は50隻規模である。運航面では10月6日時点の定時到着率が31.89% と、主要10社に比べて低い水準にある。アジア域内船社が5,000TEU 級から1万TEU 級へ大型化を進めている流れは変わらず、中期的にはアジア域内のフィーダー船腹に余裕が生まれ、シンガポール・タンジュンペラパス積替え経由のコストは下がる方向である(日本発シンガポール航路)。ただし積替えルートは本船ごとの遅延が積み上がるため、定時率の低い船社を含む場合は納期案内に余裕を持たせたい。

紅海とホルムズの前提条件

バブ・エル・マンデブ海峡は、フーシ派が9月10日から11日にかけてモカ、ハニシュ諸島、ドゥバブ、そして海峡内のペリム島を掌握して以降、同派の実効支配下にある。注目すべきは9月の実績で、同海域での商船被弾の報告はゼロだった。船社がスエズ復帰を進めたのは、この静けさを前提にした判断である。

ところが10月4日、プロダクトタンカー Chrystal Sky(73,976DWT、マーシャル諸島船籍)がモカ南方60海里で複数の爆発に遭遇した。UKMTO への報告は1650 UTC で、1発は船体から約100mの至近弾だったが船体は無損傷、乗組員も無事で、シッカ(インド)発バルセロナ向けの航海をそのまま続けている。10月上旬にはイエメン政府側が「イエメンの夜明け(Operation Dawn of Yemen)」を開始し海峡付近の奪還を試みたが、フーシ派は陣地を維持したと報じられた。

実務上の読み方として重要なのは、この件を受けてスエズ復帰を取り下げた船社は確認されていないことである。むしろ同じ週に Premier Alliance が復帰を発表し、4,000TEU超のコンテナ船は週30隻が通航して2024年以来の最多となった。つまり「至近弾1発では船社は止まらない」ことが実証された。逆に言えば、直撃や人的被害が出た瞬間には一気に逆回転するという可逆性が残っている。喜望峰航路が再逼迫すれば、アフリカ向けのスペースとレートは短期間で悪化しうる。緩んでいる局面でスペースを確保しておく一方、長期の運賃をこの水準で固定するのは避けたい(海上運賃の構成)。

もう一つの前提はホルムズ海峡で、こちらは7月30日以降、実質的に通常の商業航行が止まったままである。戦争リスク保険料は船価の7.5〜10%、Brent は100ドルを超えて推移しており、各社の燃料系サーチャージの底上げ要因として効き続けている(MSC の10月分 Global Fuel Surcharge は253ドル/TEU)。なお、スエズ運河庁の大型コンテナ船向け15%割引は2026年4月7日に停止されたままで、代替策も発表されていない。割引がなくても船社が戻っているということは、喜望峰回りのコスト差のほうが大きいという判断であり、この流れは割引の有無では止まらないと見ておきたい。

荷主・フォワーダー向けの実務ポイント

  • 10月後半から11月のアジア発相場は、まだ下方向に見ておく。アジア〜欧州は13週連続の下落で、来週の欠便はアジア〜欧州6便・太平洋4便と少ない。国慶節明けで需要が落ちるのに供給が絞られていないため、下げ余地が残っている。長期固定は不利になりやすい局面である(海上運賃の構成)。
  • アフリカ向けは幹線の下げと連動しない。同じ週に CMA CGM は中国発西アフリカPSSを2段引き上げ、Hapag-Lloyd はテマ向けリーファーに混雑チャージを新設した。アフリカ向けの見積は仕向国名を明示して取り直すのが前提である。「中国発」と「極東発」で対象が違うことにも注意したい。
  • Maersk の新しい WAF ローテーションを読み間違えない。WAF3 のテマ・アパパ寄港は西アフリカ発の輸出のみの扱いで、テマ・アパパ向けの輸入は WAF6 側になる。ロメとポワントノワールが積替えハブに加わったので、直航と積替えの2本を並べて見積を取る価値がある(日本発テマ航路、日本発アパパ航路)。
  • 西アフリカの滞船は「改善したが分散は大きい」。テマ5.8日・アビジャン4.5日まで下がったが、アビジャンは「最大12日待ちの本船がある」と併記されている。コナクリ・ダカール・ラゴス・モンバサは今週も未掲載。納期は本船ETAではなく搬出完了ベースで案内したい(デマレージとディテンション)。
  • サーチャージは基本運賃と別に並べて比較する。MSC は10月19日から Piracy 55ドル+Suez 36ドル/TEU を地中海・北アフリカの約35港へ拡大し、燃料は253ドル/TEU。基本運賃の下げ幅と総額の下げ幅は一致しないので、項目単位で比較するのが安全である。
  • 切替はサービス単位で起きるので、船社名で判断しない。Ocean Alliance は AEU1/LL1 の西航だけ、Premier Alliance は FE1 と IOX/INX だけ、Yang Ming の MS2 は喜望峰のまま。実際の寄港順とカットオフで確認したい(ETD・ETA・カットオフの読み方)。

来週以降の注目

  • 10/15CMA CGM 中国発西アフリカPSS 第1段が発効(Central 200ドル・ギニア 200ドル・North/South 400ドル)。あわせて極東発ポートルイス 400ドル・モガディシュ 100ドルも発効する。
  • 10/19MSC の極東 → 北欧州・地中海・黒海 FAK の適用開始(10月31日まで)と、アジア → 地中海・北アフリカ約35港への Piracy 55ドル+Suez 36ドル/TEU の拡大。
  • 10/19ONE Continuity がレムチャバン発=Premier Alliance のスエズ復帰の実行開始。初の西航スエズ通航は11月9日、ロッテルダム着は11月19日。
  • 10/22CMA CGM 中国発西アフリカPSS 第2段が発効(Central 350ドル・North/South 550ドル、ギニア 200ドル据え置き)。
  • 10/27Maersk AE12 の Umm Qarn(642W)がタンジュンペラパス発=AE12 初のスエズ通航。
  • 数週間内Hapag-Lloyd/FIMI による ZIM 買収の新規申請の提出。10月6日の期限は満たされず、2026年末クロージング目標との整合が焦点。ZIM株主10%超が株主総会決議を要求中。
  • 10/15Drewry WCI の10月15日発表分。アジア〜欧州が14週連続の下落に入るか、欠便の積み増しで下げ止まるか。
  • 10月後半欠便の積み増しがあるか。船社が船腹を引っ込めなければ相場はさらに下がる。
  • 継続Yang Ming の MS2(アジア〜西地中海)がスエズへ動くか。喜望峰に最も長く船腹を置いているクラスである。
  • 継続Evergreen 運航船の西航スエズ。10月4日の実施は COSCO/OOCL 運航船で、Evergreen 運航船は7号連続で未公表。
  • 継続Ocean Alliance の FAL1・FAL3 の西航。現在は東航のみスエズで、西航は喜望峰のまま。
  • 継続紅海での商船被弾と、船社のスエズ復帰方針が反転しないか。
  • 継続港湾レポートでコナクリ・ダカール・ラゴス・モンバサの数字が再掲載されるか。
  • 10月中旬アビジャン港の復旧計画(6〜7週間)の期限。平均は4.5日まで下がったが「最大12日待ち」の併記は残っている。
  • 継続ガーナ規格庁による中古車輸入規制の実務影響。10月1日から厳格運用が始まり、15年超の輸入不可に加えて輸出国でのGSA指定機関による検査と適合証明(CoC)が必須となった(HSコードの調べ方)。

出典

  1. Drewry — World Container Index(2026年10月8日発表)
  2. Xeneta — Weekly ocean container shipping market update(2026年10月8日)
  3. ContainerSignal Daily — Carriers edge back to Suez as rates fall
  4. Kuehne+Nagel — Port operational updates(2026年9月30日〜10月6日)
  5. The Loadstar — Premier Alliance prepares for Asia-N Europe services return to Suez
  6. gCaptain — Premier Alliance prepares for Asia-N Europe services return to Suez
  7. El Estrecho Digital — The Premier Alliance reintroduces Suez to its network between Asia and Europe
  8. Ship & Bunker — ONE, HMM and Yang Ming’s Premier Alliance to resume Suez routing
  9. Splash247 — Premier Alliance joins accelerating return to Suez
  10. Seatrade Maritime — Ocean Alliance network keeps Cape rerouting, details Suez options
  11. Logistics Middle East — Cosco returns to Suez Canal as container traffic rises
  12. Seatrade Maritime — Cosco Shipping Bulk launches first container service
  13. Container News — Germany blocks COSCO takeover of logistics firm Zippel over security concerns
  14. Container News — MSC updates FAK rates from Far East to Europe, Mediterranean and Black Sea
  15. Container News — MSC extends piracy and Suez surcharges on Asia-Mediterranean trade
  16. Container News — MSC and ONE reshape Ipanema VSA
  17. Container News — Maersk restructures Europe-West Africa service network
  18. El Estrecho Digital — Maersk reorganizes its services between Europe and West Africa
  19. The Loadstar — Maersk returns West Africa service to the Red Sea
  20. Container News — Maersk introduces new Mediterranean peak season surcharges
  21. Container News — CMA CGM introduces new peak season surcharges across Africa and Americas
  22. Container News — CMA CGM raises West Africa surcharges and updates Mogadishu PSS
  23. The Guardian Nigeria — CMA CGM increases peak season surcharge on China–West Africa cargo
  24. Container News — Hapag-Lloyd responds to Israeli concerns over revised ZIM deal
  25. Container News — ZIM shareholders seek vote on revised Hapag-Lloyd deal
  26. Seatrade Maritime — Hapag-Lloyd must resubmit Zim deal after Israeli review halted
  27. Container News — Hapag-Lloyd adds US$250/TEU reefer congestion surcharge at Tema
  28. WorldCargo News — ZIM lifts 2026 earnings outlook by up to US$700m
  29. TipRanks — ZIM lifts 2026 profit guidance on strong freight market
  30. Seatrade Maritime — Product tanker attacked in Red Sea as hostilities escalate
  31. Marine Insight — Multiple explosions reported near tanker off Yemen, UKMTO says
  32. The Red Team Analysis Society — The Houthis, Bab el-Mandeb, and Maritime Transport
  33. Container Magazine — Suez Canal Authority withdraws containership transit discount three months early
  34. TradLinx — Late-October Asia-Europe sailings face growing cancellation risk
  35. Businessday NG — Nigerian ports record slower vessel turnaround in H1 2026
  36. News Ghana — Ghana begins strict checks on imported used vehicles
  37. ad-hoc-news — Yang Ming grows revenue 69.94 percent(2026年10月8日公表の9月分)
  38. Hashtag Investing — ONE raises reefer inland fuel surcharge to US$625

本記事は、各社の公表資料および報道をもとに OCEAN FREIGHT JAPAN 編集部がまとめたものです(対象期間:2026年10月1日〜10月9日)。Drewry WCI は10月8日発表分、港湾の滞船は Kuehne+Nagel の9月30日〜10月6日版を掲載しています。運賃・サーチャージの水準や適用条件は発表後に変更される場合があり、発地・貨物・契約条件によって実際の適用と異なることがあります。実務での適用可否は、必ず各船社の正式タリフおよび見積でご確認ください。