海運ウィークリー

海運ウィークリー 2026年9月24日|スエズ復帰は「方向別」に広がった

2026年9月17日〜9月24日の週は、前号で「切り替え時期を示していない」と書いた Ocean Alliance が動いた一週間だった。9月16日、24,188TEU の OOCL Portugal がスエズ運河を南航し、COSCO SHIPPING Lines として紅海危機以降はじめての南航となっている。ただし戻っているのは東航(欧州発アジア向けの復航)だけで、西航は喜望峰経由のままだ。MSC も同じく西航のみをスエズへ戻す判断をしており、同じサービスでも往復で経路が違う状態が広がっている。一方でフーシ派はバブ・エル・マンデブ海峡のペリム島を掌握し、9月15日には国連安保理が緊急会合を開いた。船は戻りつつあるが、前提条件は安定していない。

今週の要点

  • Ocean Alliance がスエズへ動いた。9月16日、OOCL Portugal(24,188TEU、Ocean Alliance の NEU2 サービス、ベルギー → 中国)がスエズ運河を南航した。COSCO と OOCL は欧州・地中海〜アジアで計5サービスを順次スエズ経由へ切り替えており、COSCO Kilimanjaro が9月20日、OOCL Denmark が9月28日に続く予定である。
  • 戻っているのは東航だけ。Ocean Alliance の LL4(CMA CGM の FAL1)は今後の東航を全便スエズ経由とする計画だが、西航は喜望峰のまま。MSC も Indusa サービス(インド亜大陸 〜 米国・メキシコ)の西航のみをスエズへ戻し、第1船の MSC Domna X が9月23日にコロンボを出港した。東航は引き続き喜望峰経由である。
  • CMA CGM が中国発西アフリカ向けPSSを国別に再編。9月21日発効で、それまでの一律300ドル/TEU が国別の細目に置き換わった。セネガル 100ドル/TEU、ガーナ・トーゴ 150ドル/TEU、ナイジェリア・コートジボワール・ベナン・赤道ギニア 50ドル/TEU など、水準は大きく下がっている。
  • 西アフリカの滞船は悪化。テマは7日平均6.35日(前週5.78日)、アビジャンは6.80日(前週4.25日)へ。アビジャンは荷役機器の故障と車両不足が重なっている。一方ラゴスは本船待ちが1日まで改善したが、陸側の渋滞で搬出に約4日かかる。

コンテナ運賃と市況

項目 水準 前週比
Drewry WCI 総合指数(40ft) 4,500ドル ▲ 1%
上海 → ロサンゼルス 7,712ドル ▲ 5%
上海 → ニューヨーク 10,394ドル ▲ 7%
上海 → ジェノヴァ 4,016ドル ▼ 5%
上海 → ロッテルダム 3,626ドル ▼ 9%
テマ(ガーナ)滞船 6.35 日 悪化
アビジャン(コートジボワール)滞船 6.80 日 大幅悪化
コナクリ(ギニア)滞船 10.0 日 深刻
ダカール(セネガル)滞船 2.5 日 やや混雑
ラゴス(アパパ/ティンカン)滞船 各 1.0 日 改善

総合指数は1%上昇したが、東西の方向はこれまで以上に食い違っている。太平洋は中国の国慶節前の駆け込みと欠便で大きく上げ、上海 → ニューヨークは +7% に達した。対するアジア〜欧州は、スエズ復帰で船腹が戻り、上海 → ロッテルダムが ▼9% と下げ足を速めている(日本発ロッテルダム航路)。欠便は第39週から第43週までの5週間で、予定720便のうち77便にのぼる。西アフリカの港湾は今週いずれも悪化した。テマは約7日の遅延が断続的に続き(日本発テマ航路)、アビジャンは荷役機器の故障と車両不足でコンテナの蔵置日数が伸びている。新たにコナクリ(ギニア)が7日平均10.0日と突出し、ダカールもマリ回廊の迂回貨物が流入して2.5日まで上がった(日本発ダカール航路)。ラゴスは本船待ちこそ解消したが、道路渋滞でヤードからの搬出に約4日を要する(日本発アパパ航路)。

「東航だけスエズ」は荷主に何をもたらすか?

今週の本質は、スエズ復帰が全面的ではなく方向別に進んでいることである。Ocean Alliance の LL4/FAL1 も、CMA CGM の FAL3 も、MSC の Indusa も、いずれも戻したのはアジアへ帰る側(東航・バックホール)だけだ。アジアから欧州・北米へ出す往航は、依然として喜望峰を回っている。

この非対称には理由がある。復路は空コンテナと相対的に軽い貨物が主体で、仮に紅海情勢が再び悪化しても失うものが小さい。一方、往航は高価値貨物を満載しており、リスクの重みが違う。船社は軽い側から試していると読むのが自然である。

荷主・フォワーダーにとっての実務的な含意は3つある。第一に、往航の所要日数はまだ短くならない。「スエズが戻った」という見出しだけで納期の前提を書き換えると、実態とずれる(ETD・ETA・カットオフの読み方)。第二に、復路が短くなる分、空コンテナの回送サイクルは縮む。機器不足は緩みやすい方向に働く(コンテナ不足への備え)。第三に、往復で経路が違うサービスでは寄港順と積替えの組み合わせが変わるため、海上日数が短くなっても手元に届くタイミングが逆に後ろへずれることがある。ブッキング時は経路の名前ではなく、実際の寄港順とカットオフで確認したい(ブッキングの流れ)。

船社別の動き

MSC動きあり

Indusa サービス(インド亜大陸・パキスタン 〜 米国・メキシコ)の西航のみをスエズ経由へ戻した。第1船は MSC Domna X(航海番号 IV637A)で、9月23日にコロンボを出港している。東航は引き続き喜望峰経由である。あわせて9月15日発効で、アジア → 東地中海に海賊リスク 55ドル/TEU とスエズ運河使用 36ドル/TEU の2本のサーチャージを新設した。また9月20日には、連邦政府とニーダーザクセン州が保有するドイツのクルーズ客船建造会社 Meyer Werft の約80%の株式について、取得を協議中と報じられている(合意やクロージングの発表はない)。8月24日に発表したアジア〜欧州4サービスのスエズ経由は継続中。

Maersk動きあり

前号で予告した Gemini 協調 4サービスのスエズ切り替えが実際に始まった。初便は AE11 の Antonia Maersk(航海635W)で、予定どおり9月19日にタンジュンペラパスを出港している。AE5 の Marchen Maersk が9月21日、ME2 の Cornelia Maersk が9月24日で続く予定だが、AE12 の初便日程は9月24日時点でも未発表である。Hapag-Lloyd 側の呼称は AE5 が NE4、AE11 が SE2、AE12 が SE1、ME2 が IEX。既存の AE15・AE19 と合わせて6本がスエズ経由となる。紅海情勢が悪化するなかでも方針は維持されており、撤回の兆しは確認できない。

CMA CGM動きあり

9月21日発効で、中国発アフリカ向けのピークシーズンサーチャージを国別に組み替えた。ナイジェリア・コートジボワール・ベナン・赤道ギニア 50ドル/TEU(華中・華南発)、ガーナ・トーゴ 150ドル/TEU、リベリア・モーリタニア・ガンビア・シエラレオネ・ギニアビサウ・カーボベルデ・サントメプリンシペ 200ドル/TEU、セネガル 100ドル/TEU、アンゴラ・コンゴ・DRC・ナミビア・ガボン・カメルーン 75ドル/TEU で、いずれもドライ・リーファーの両方が対象である。それまでの中国発西アフリカ一律300ドル/TEU と比べると水準は大きく下がった。9月25日には中国 → ダーバン(南アフリカ)に 350ドル/TEU(全貨物)が発効し、10月1日には北欧州・バルト・スカンジナビア・地中海・アドリア発の西アフリカ向けリーファーPSSが 100ユーロ/TEU から 200ユーロ/TEU へ引き上げられる。Ocean Alliance の一員として FAL3・FAL1 の東航はスエズ経由、西航は喜望峰のままである。

COSCO動きあり

9月16日、24,188TEU の OOCL Portugal がスエズ運河を南航した。ベルギー → 中国の航海で、Ocean Alliance の NEU2 サービスにあたり、COSCO SHIPPING Lines として紅海危機以降はじめての南航である。欧州・地中海〜アジアでは計5サービスが東航スエズ経由へ移り、OOCL Portugal に続いて COSCO Spain・COSCO Taurus、COSCO Kilimanjaro が9月20日、OOCL Denmark が9月28日に予定されている。LL4(Ocean Alliance の NEU4、CMA CGM の FAL1)は今後の東航を全便スエズ経由とする計画だが、西航は喜望峰のままである。スエズ運河庁によれば、2026年1〜8月のコンテナ船純トン数は7,210万トンで前年同期比 +54.2%、9月16日の単日では39隻・計230万純トンが通航した。

Hapag-Lloyd注視

ZIM 買収の改善案は9月末までにイスラエルの閣議へ提出される予定である。Habben Jansen CEO は「イスラエルの海運の安全と独立をさらに強化する改善案を策定している」「改善案はアジアを含む主要航路へのイスラエルのアクセスを確保する」と説明しているが、9月24日時点で提出および判断の公表は確認できていない。改善案の骨子は、①外資1社が政府へ届け出る必要が生じるしきい値を24%から10%へ引き下げ、②FIMI が ZIM Israel をイスラエル国外に上場しないと確約、③ZIM Israel(16隻)がゴールデンシェアに関する責任を拡大して担う、の3点。反対は根強く、8省庁のうち6省が反対に回るとの報道があり、国家海運局も反対の立場である。あわせて Maersk と共同で Gemini 4サービスのスエズ切り替えに参加している。

ONE小幅

9月21日にサステナビリティレポート2026を公表したが、運賃・サービス面の新規発表は今週なかった。10月1日には欧州環境サーチャージの第4四半期分が発効する予定で、アジア・オセアニア → 欧州が110〜420ドルなど全18航路が対象、今回から英国発着の全貨物にも適用が拡大される。9月11日のトランスパシフィック東行き中国発ピークシーズンサーチャージ改定と、9月15日のロサンゼルス港 Yusen Terminal(YTI)のリハンドル料は、いずれも予定どおり実施済みである。インド・中東〜東アフリカの IMM/IMD サービスは運用を継続している。

Evergreen動きなし

5号連続で動きなしとなった。公式通知は9月7日付の運航アドバイザリーが最新で、9月17日以降の新規は確認できなかった。Ocean Alliance の一員として東航スエズ切り替えの枠組みには入っているが、Evergreen 運航船での具体的な初便は公表されていない。

HMM注視

東アフリカ向け新サービス GIA(Gulf–India–East Africa)の初便がナバシェバを出港する週に入ったが、9月24日時点で初便出港を確認できる公表はない。約2,800TEU型5隻を投入し、寄港順はナバシェバ(インド)→ ムンドラ(インド)→ ダルエスサラーム(タンザニア)→ モンバサ(ケニア)→ ナバシェバ。COSCO SHIPPING・PIL・INTERASIA LINES との4社共同運航で、将来は湾岸地域まで寄港を伸ばす計画も示されている。受け入れ側のモンバサは本船待ちが7日平均2.0日と落ち着いている(日本発モンバサ航路、日本発ダルエスサラーム航路)。

Yang Ming動きなし

今週分の新規発表はない。9月3日に Hanwha Ocean と締結した 13,650TEU 型 LNG 二元燃料船6隻の建造契約(約1兆5,500億ウォン、約11.4億ドル)は、巨済造船所で建造され2029年下期までに順次引き渡される予定である。高マンガン鋼を用いた Type-B の LNG 燃料タンクを採用する。HD 現代重工の 15,500TEU 型5隻も進行中。

ZIM動きあり

アジア〜南米東岸の新サービス ZIM Falcon Service(ZFS)の初便が9月13日に上海を出港した。寄港順は上海・寧波・香港・塩田から、リオデジャネイロ・サントス・パラナグア・ナヴェガンテス・モンテビデオ・ブエノスアイレスである。9月1日には EFS(緊急燃料サーチャージ)・NEF(新排出料)・GFS(グリーン燃料サーチャージ)を改定済み。Hapag-Lloyd/FIMI による改善案は9月末に閣議提出の見込みで、ZIM 側は既存の合併契約に沿って行動し規制当局の審査に協力していると説明している。

Wan Hai動きなし

今週分の新規発表はない。受注残は50隻・約50万TEUのままである。

紅海の前提条件

船社がスエズへ戻る一方で、海峡そのものの状況は悪化している。フーシ派は9月11日から12日にかけてモカとドゥバブを制圧し、バブ・エル・マンデブ海峡内のペリム島(マユン島)を掌握した。海峡の東岸を実効支配下に置いた形である(西岸はジブチ側にあたるため完全な支配ではない)。サウジアラビアの東西パイプラインがドローン攻撃で停止し、原油価格は5月中旬以来となる100ドル近辺まで上昇した。

9月15日には国連安保理が緊急会合を開き、事務次長補は「紅海とバブ・エル・マンデブにおける航行の権利と自由は完全に回復され、すべての当事者に尊重されなければならない」と述べている。同時に「船舶追跡サイトによれば、紅海の商業航行は現時点では影響を受けていないように見える」とも報告された。フーシ派は「サウジ船籍を除くすべての企業にとって航行は安全」と表明しており、船社はこれを前提に復帰を進めている。ただし各社はいずれも「紅海の安定に依存する」として、経路を戻す余地を残していると説明している。

荷主の側から見れば、いまの運賃とスペースの緩みは恒久的な前提ではないということになる。商船が1隻でも狙われれば方針は即座に反転しうるし、反転すれば喜望峰側の船腹配置が一気に動く。長めの有効期限で運賃を固定する場合は、この振れ幅を織り込んでおきたい(海上運賃の構成)。

荷主・フォワーダー向けの実務ポイント

  • 「スエズ復帰」の見出しで往航の納期を書き換えない。戻っているのは東航(アジアへ帰る復路)が中心で、アジア発の往航は依然として喜望峰経由が多い。サービス名ではなく実際の寄港順で確認する(ETD・ETA・カットオフの読み方)。
  • 西アフリカ向けは本船ETAではなく搬出完了ベースで納期を案内する。ラゴスのように本船待ちが1日まで改善しても、陸側の渋滞で搬出に約4日かかる港がある。混雑の場所が沖待ちからヤード・陸送へ移りつつある(デマレージとディテンション)。
  • アフリカ向けの見積では仕向国名を明示してサーチャージ水準を確認する。CMA CGM が一律から国別に刻み直したことで、今後は国単位で機動的に上げ下げされる可能性が高い。「西アフリカ向けPSSの有無」だけの確認では足りない。
  • 空コンテナの回送サイクルは縮む方向。復路がスエズ経由になった分、機器の回転は速くなる。機器不足を理由にした割増や制限があれば、更新のタイミングで見直しを求める余地がある(コンテナ不足への備え)。
  • 10月1日前後に発効する料金項目が多い。CMA CGM の欧州発西アフリカ向けリーファーPSS(200ユーロ/TEU)、ONE の欧州環境サーチャージ第4四半期分(英国発着へ拡大)など。10月積みの見積は9月末までに取り直しておきたい。

来週以降の注目

  • 9月末Hapag-Lloyd/FIMI による ZIM 買収改善案の閣議提出。9月24日時点で未発表。
  • 9/25CMA CGM の中国 → ダーバン(南アフリカ)350ドル/TEU が発効。
  • 9/28OOCL Denmark の東航スエズ通航(Ocean Alliance の5サービス目)。
  • 9/28イタリア港湾で24時間のストライキが予定。地中海積替え貨物のスケジュールに影響しうる。
  • 10/1CMA CGM の欧州発西アフリカ向けリーファーPSSが 200ユーロ/TEU へ引き上げ。
  • 10/1ONE の欧州環境サーチャージ 第4四半期分が発効(英国発着への適用拡大を含む)。
  • 10/1ガーナが15年超の中古車の輸入を禁止(ガーナ規格庁)。当初の「10年超」案を緩和して施行される。
  • 10/1Emirates Shipping Line が HS3915(廃プラスチック)の引受を全面停止。CMA CGM(2022年)に次いで2社目。
  • 10月中旬アビジャン港の復旧計画(6〜7週間)の期限。今週6.80日へ悪化しており達成は不透明。
  • 継続Ocean Alliance の西航(アジア発)がスエズへ切り替わるかどうか。西航が動いて初めて喜望峰側の船腹配置が大きく変わる。
  • 継続バブ・エル・マンデブの情勢と商業航行の安全。

出典

  1. Drewry — World Container Index(2026年9月17日発表)
  2. Kuehne+Nagel — Port operational updates(2026年9月16〜22日)
  3. Container News — COSCO returns to Suez Canal as OOCL Portugal makes southbound transit
  4. gCaptain — Container shipping returns to Suez despite rising Red Sea risks
  5. Container News — The Suez route is returning, the voyage is not yet normal
  6. Container News — MSC partially restores Suez transits on Indusa service
  7. MSC — Resumption of Indusa Service in the Red Sea Region
  8. Maersk — Structural changes to AE5, AE11, AE12 and ME2 Gemini services
  9. The Loadstar — Gemini steps up return to Suez with four more Asia-Europe services
  10. Container News — CMA CGM updates peak season surcharges across major trades
  11. Container News — CMA CGM announces new surcharges across several trades
  12. NBC News — Houthis capture Yemen’s Red Sea coastline on Bab el-Mandeb
  13. United Nations — Security Council 10222nd meeting(2026年9月15日)
  14. Euronews — Houthis seize Yemeni island in Bab el-Mandeb
  15. Seatrade Maritime — Hapag-Lloyd reshapes Zim deal to address Israel security concerns
  16. Globes — Hapag-Lloyd, FIMI to submit improved offer for ZIM
  17. ONE — Newsroom
  18. ZIM — Launches new Falcon Service connecting Asia and the east coast of South America
  19. Cyprus Shipping News — Hanwha Ocean wins 1.55 trillion won order from Yang Ming
  20. Splash247 — Emirates Shipping Line bans plastic waste cargoes
  21. Citi Newsroom — No more importation of used vehicles 15 years and older from October 1
  22. Nairametrics — Why lower vehicle tariffs may not bring imports back to Lagos
  23. Logistics Manager — HMM launches Gulf–India–East Africa (GIA) service

本記事は、各社の公表資料および報道をもとに OCEAN FREIGHT JAPAN 編集部がまとめたものです(対象期間:2026年9月17日〜9月24日)。運賃・サーチャージの水準や適用条件は発表後に変更される場合があり、発地・貨物・契約条件によって実際の適用と異なることがあります。実務での適用可否は、必ず各船社の正式タリフおよび見積でご確認ください。