海運ウィークリー 2026年10月22日|地中海ハブ経由の西アフリカ網、東アフリカにもPSS
2026年10月16日〜22日の週は、ジブラルタル海峡の積替え拠点をめぐって船社の動きが重なった一週間だった。Maerskはアルヘシラス・タンジェメッドを起点に西アフリカ網を組み直し(12月第3週から)、ダカール直結のWAF1とラゴスなど5港を回るWAF5を打ち出した。同じ週にGemini(Maersk/Hapag-Lloyd)はスエズ経由でアルヘシラス・タンジェメッドへ直行するSE5を新設(上海11月22日初便)。両者がつながると、アジアから喜望峰を通らずに西アフリカへ届く経路が一つの船社網の中で完結する。サーチャージでは、CMA CGMが極東発ポートルイス1,235ドル/TEU・華南/香港発モンバサ1,000ドル/TEUのPSSを発表し、値上げの波が西アフリカから東アフリカ・インド洋へ広がった。Alphalinerによればアジア〜欧州の船腹の63%がすでにスエズ経由に戻り、上位10社で残るのはEvergreenとZIMだけになった。一方、ホルムズ海峡では攻撃が過去最多ペースで続き、ブレント原油は10月16日に110ドルをつけた。
今週の要点
- 「アジア→スエズ→ジブラルタル→西アフリカ」の積替え網が組み上がる。Maerskが10月19日、アルヘシラス/タンジェメッド起点のWAF1(ダカール)・WAF5(モンロビア・アビジャン・タコラディ・サンペドロ・ラゴス)を発表し、WAF3にテマ・オンネ・ポワントノワール、WAF6にコトヌーを追加した(12月第3週から)。Geminiは10月20日、スエズ経由でアルヘシラス・タンジェメッドへ向かうSE5の新設を発表した(上海11月22日初便)。
- PSSの波が東アフリカ・インド洋へ広がった。CMA CGMが10月21日、極東発ポートルイス(モーリシャス)1,235ドル/TEU(10月28日発効)、華南・香港発モンバサ(ケニア)1,000ドル/TEU(10月25日発効)を発表。極東発ダーバンも550ドルから750ドル/TEUへ引き上げられた(10月22日発効)。西アフリカ向けPSSもCMA CGM(10月22日)・Maersk(10月26日)が相次いで発効する。
- アジア〜欧州の63%がスエズ側へ戻った。Alphaliner(10月21日)によると、9月15日〜10月15日のアジア〜欧州船腹870万TEUのうち550万TEUが紅海経由のサービスに配船されている(地中海70%・北欧州58%)。上位10社でまだ戻っていないのはEvergreenとZIMの2社のみ。
- ホルムズの攻撃は過去最多ペース。UKMTOの確認分だけで10月16日までの1週間に12隻以上が攻撃され、10月前半は開戦以来最多となった。10月21日にもオマーン・ブハ沖でタンカーが被弾。ブレント原油は10月16日に5月以来の110ドルをつけた。
コンテナ運賃と市況
| 項目 | 水準 | 前週比 |
|---|---|---|
| Drewry WCI 総合指数(40ft、10月15日) | 4,485ドル | ▲ 3% |
| 上海 → ロッテルダム(10月15日) | 3,522ドル | ▲ 6% |
| 上海 → ジェノヴァ(10月15日) | 3,945ドル | ▲ 7% |
| 極東 → 北欧州(Xeneta、10月16日) | 3,568ドル/FEU | ▲ 2.5% |
| 極東 → 地中海(Xeneta、10月16日) | 4,165ドル/FEU | ▲ 3.2% |
| 極東 → 米国西岸(Xeneta、10月16日) | 8,296ドル/FEU | ▼ 0.2% |
| アジア〜欧州のスエズ経由比率(Alphaliner) | 63% | — |
| ブレント原油(10月16日) | 110ドル | 5月以来の高値 |
| テマ(ガーナ)滞船 | 5.87 日 | 悪化 |
| コナクリ(ギニア)滞船 | 12.2 日 | やや改善 |
| ポワントノワール(コンゴ共和国)滞船 | 4.89 日 | 悪化 |
| ダカール(セネガル)滞船 | 2.2 日 | — |
| ダーバン(南アフリカ)滞船 | 7.33 日 | 悪化 |
| モンバサ(ケニア)滞船 | 3.0 日 | 悪化 |
Drewry WCIは毎週木曜(英国時間)の発表で、本記事の執筆時点では10月22日分がまだ公表されていないため、前週(10月15日)の数値を掲載している。別系統のXeneta(10月16日)でも極東→北欧州が+2.5%、極東→地中海が+3.2%と同じ方向を示しており、アジア〜欧州の反発は指数1本だけの動きではなかった。ただしAlphalinerの集計どおりアジア〜欧州の船腹の6割超がすでにスエズ経由に戻り、Xenetaも「戻った船腹が2027年にかけて運賃を押し下げる」とみている。MSCが11月のアジア〜北欧州2便(Britannia)を欠航にしたように、船社は船腹を絞って水準を守りにきているが、反発が長続きする材料は弱く、長期契約を今の水準前提で組むのは慎重にしたい(海上運賃の内訳と見積の読み方)。
港湾では、テマが4週ぶりに悪化し(5.87日)、ポワントノワールはヤード稼働率がほぼ95%に達して固定ウィンドウと先着順の着岸を停止した。コナクリは12.2日とやや改善したが、掲載港の中では依然最長である。ダーバンは7.33日へ悪化し、寄港を抜く船社も出ているため、ダーバン積替えで東アフリカ・インド洋へ向かう貨物は納期と現地での保管・返却期限に余裕を見たい(日本→ダーバン航路、デマレージ・ディテンションの基礎)。一方、ダカールは2.2日と落ち着いており、MaerskのWAF1の終点として好材料である(日本→ダカール航路)。原油高は11月の燃料サーチャージ改定に効いてくるため、11月積みの見積は改定日をまたぐかを確認しておきたい。
ジブラルタル海峡に集まる積替え網——荷主が見るべき3点
今週はMaersk・Gemini・Yang Mingの3者が、そろってアルヘシラス/タンジェメッドに手を入れた。
- SE5とWAF1/WAF5がつながる時期は12月中旬以降。SE5(上海・厦門・タンジュンペラパス→スエズ→アルヘシラス・タンジェメッド)の初便は11月22日上海発、西アフリカ側の新体制は12月第3週から。1月積みの見積から、喜望峰経由の直行と地中海ハブ経由の両方を並べて比較できるようになる。
- タンジェ積替えのサービスはSE5に集約される。同じ改編でSE2・NE1はタンジェ寄港をやめ、SE1はアルヘシラスをポートサイドに置き換える。ブッキング時は「Gemini」ではなくサービスコードまで指定して確認したい。
- ハブ昇格直後の逼迫に注意。WAF3に加わるポワントノワールは今週すでに先着順着岸を停止している。Yang Mingもタンジェ〜カサブランカの週1シャトルを始めており、タンジェの積替え能力と混雑が次の確認点になる。
船社別の動き
MSC動きあり
10月14日、アジア〜北欧州のBritannia 2便(第45週・第46週)を「市況」を理由に欠航とした。10月19日には前号で報じたアジア→地中海・北アフリカ約35港のPiracy 55ドル+Suez 36ドル/TEUが発効。同じ週、アジア→カサブランカの表面運賃を引き下げつつ、燃料(GFO)253ドル/TEU・ECA 15ドル/TEUを別建てにしたと報じられた。また10月7日付で、極東発サブサハラ・アフリカ/インド洋向けの運賃改定(10月15日〜31日適用)を告知している。11月積みは改定後の運賃で見積を取り直す必要がある。北アフリカ向けは付帯料金を含めた総額で比較したい。
Maersk動きあり
10月19日、西地中海〜西アフリカ網の再編を発表した(12月第3週から)。WAF1はアルヘシラス→タンジェメッド→ダカールの専用ループで、アジア・中東発貨物の積替えを想定する。WAF5はアルヘシラス・タンジェメッド起点でモンロビア・アビジャン・タコラディ・サンペドロ・ラゴスを回る。WAF3にはテマ・オンネ・ポワントノワール、WAF6にはコトヌーが加わる(日本→テマ航路)。前号で報じた中国・香港・台湾発西アフリカ向けPSS(20ft 800ドル・40ft 1,600ドル)は10月26日に発効する。第3四半期決算は11月5日。
CMA CGM動きあり
10月21日、東アフリカ・インド洋向けのPSSを発表した。極東発ポートルイス1,235ドル/TEU(10月28日発効)、華南・香港発モンバサ1,000ドル/TEU(10月25日発効)で、いずれも全貨物・期限なし。極東発ダーバンは550ドルから750ドル/TEUへ、中国発モザンビークは200ドル/TEUが10月22日に発効し、前号で報じた中国発西アフリカPSS第2段(Central 350ドル・North/South 550ドル)も同日発効した。起点の書き方は告知ごとに異なり、「極東発」は中国以外のアジア発(日本発を含む)も対象になりうる。モンバサ向けは華南・香港発に限られる(日本→モンバサ航路)。適用可否は発地を明示して正式タリフで確認したい。
COSCO動きあり
SCMPは10月21日、COSCOが地政学・気候リスクに対応する緊急対応体制を整え、新航路を展開していると報じた。第3四半期決算は10月29日に発表予定で、上半期の「取扱量+8%・純利益▼34%」の傾向が続いたかが焦点になる。西航スエズの追加通航は今週も具体的な報告が確認できなかった。
Hapag-Lloyd動きあり
10月20日、Geminiのアジア〜欧州網の改編を発表した(11月中旬から順次)。新設のSE5は上海→厦門→タンジュンペラパス→スエズ→アルヘシラス→タンジェメッド→アルヘシラス→スエズ→厦門で、初便はMaersk Edirne(上海11月22日)。SE1はアルヘシラスをポートサイドに置き換え、SE2・NE1はタンジェ寄港を廃止する。ZIM買収は改善案の当局提出が「今後数週間のうち」のままで、10月20日にはZIM従業員が売却反対のデモを行った。第3四半期決算は11月11〜12日。
ONE動きあり
Premier AllianceのFE1スエズ復帰初便となるONE Continuity(8,110TEU)は、10月19日にレムチャバンを出航する予定とされていた(初の西航スエズは11月9日、ロッテルダム着11月19日)。後続のNYK Venus・ONE Hamburg・NYK Orionも11〜12月にスエズ経由となる。10月20日にはProject Majiとの提携によるナイジェリアでの太陽光給水キオスク設置を発表した。
Evergreen動きなし
運賃・サービス・西航スエズに関する新規発表は今週も確認できなかった。米国代理店の告知は域内のターミナル運用のみ。Alphalinerは10月21日、上位10社で紅海経由に戻っていないのはEvergreenとZIMの2社だけだと指摘した。
HMM動きあり
10月15日に取締役会が12隻・約16億ドルの船隊投資を承認した(13,000TEU型新造8隻+フィーダー4隻、計114,100TEU)。10月20日にはHD現代グループと13,000TEU型8隻を約1.92兆ウォン(約14億ドル)で正式契約し、2029年に竣工、極東〜インド〜地中海の基幹航路に投入する。なお前号で「HD現代8隻・Hanwha Ocean 4隻、総額22億〜28億ドル」と記載したのは誤りで、上記のとおり訂正する。
Yang Ming動きあり
Arkas LineのMorocco Cabotage Serviceのスロットを借り、タンジェ〜カサブランカの週1シャトル(約1,400TEU船)を始めた。前号で15,600TEUと記載したYM Weightは15,500TEUが正しい(5隻シリーズの4番船)。同船を投入したMS2(アジア〜西地中海)は往復とも喜望峰経由のままである。第3四半期決算は11月12日(11月18日とする報道もある)。
ZIM動きあり
10月15日、年次株主総会を12月1日に開くと発表した。10月20日には従業員がHapag-Lloydへの売却に反対するデモを行った。Alphalinerは紅海経由に戻っていない上位10社の1社としてZIMを挙げており、その理由はイスラエル関連船へのフーシ派の脅威である。ZIMの喜望峰ルートを使う貨物は、当面長めの所要日数で見ておきたい。
Wan Hai動きあり
10月19日、パキスタンの港を経由するアフガニスタン・中央アジア向け貨物の引受を停止した。期限の定めはなく、即日適用である。
紅海とホルムズの前提条件
紅海(バブ・エル・マンデブ海峡)側は、10月4日のChrystal Sky以降、今週も新規の商船被弾は確認できなかった。スエズ回帰は加速しており、Linerlyticaは全面復帰を2027年第1四半期とみる。バブ・エル・マンデブを通過する船腹は10月5日時点で週44.8万TEUと、8月下旬から倍増した(2023年8月の48%)。
ホルムズ海峡では攻撃が続いている。UKMTOの確認分だけで10月16日までの1週間に12隻以上が攻撃され、1隻が沈没、2隻が航行不能になった。米国は10月15日、前号で報じたコンテナ船GFS Prideの沈没を「機雷ではなくイラン革命防衛隊の飛翔体によるもの」と発表し、イラン側の説明と対立している。10月20日にはイラク・ファオ沖、10月21日にはオマーン・ブハ沖でタンカーが被弾した。米中間選挙(11月3日)後の大規模攻撃に備えるよう軍に指示が出たとの報道もある。ホルムズを通らない航路でも、原油高(ブレント110ドル)を通じて燃料サーチャージに波及するため、11月の改定と戦争危険の保険条件は確認しておきたい。
荷主・フォワーダー向けの実務ポイント
- 西アフリカ向けは1月積みから「喜望峰直行」と「地中海ハブ経由」を比べる。MaerskのWAF1/WAF5(12月第3週〜)とGeminiのSE5(11月22日〜)がそろうと、所要日数と総額の比較ができるようになる。
- 東アフリカ・インド洋向けは起点と積替え港を明記して見積を取り直す。CMA CGMのポートルイス・ダーバンは「極東発」、モンバサは「華南・香港発」と対象が異なる。ダーバンは滞船も悪化している。
- MSCの極東発サブサハラ向け運賃は10月31日まで。11月積みは改定後の運賃で確認する。
- 運賃反発の持続性は慎重に見る。アジア〜欧州の6割超がスエズに戻っており、船腹の増加が上値を抑える。
- 燃料サーチャージの11月改定を確認する。ブレント110ドルはホルムズを通らない航路のコストにも効く。
- Evergreen・ZIMの貨物は喜望峰経由の所要日数で見る。上位10社で紅海経由に戻っていないのはこの2社のみ。
来週以降の注目
- 10/22Drewry WCIの次回発表(本記事執筆時点で未公表)。CMA CGM 中国発西アフリカPSS第2段・極東発ダーバン750ドルが発効。
- 10/25CMA CGM 華南・香港発モンバサPSS 1,000ドル/TEU発効。
- 10/26Maersk 中国・香港・台湾発西アフリカPSS(800ドル/1,600ドル)発効。
- 10/27Maersk AE12のUmm Qarnがタンジュンペラパス発=AE12初のスエズ通航。
- 10/28CMA CGM 極東発ポートルイスPSS 1,235ドル/TEU発効。
- 10/29COSCO 第3四半期決算。
- 10/31MSC 極東発サブサハラ・アフリカ向け運賃(10月15日〜)の適用期限。
- 11/3米中間選挙。選挙後のホルムズ情勢に注意。
- 11/5Maersk 第3四半期決算。
- 11/9Premier Alliance FE1(ONE Continuity)初の西航スエズ通航。
- 11/22Gemini SE5初便(Maersk Edirne、上海発)。
- 12月第3週Maersk 西アフリカ新体制(WAF1・WAF5・WAF3・WAF6)開始。
- 継続Yang Ming MS2のスエズ移行、Evergreen運航船の西航スエズ、西アフリカ・南アフリカ港湾の滞船(ETD・ETA・カットの見方)。
出典
- Drewry — World Container Index(2026年10月15日発表)
- Xeneta — Weekly ocean container shipping market update(10月16日)
- Safety4Sea — Alphaliner: 63% of Far East–Europe capacity deployed on services using Red Sea route
- Seatrade Maritime — Full Suez return for container carriers expected by Q1 2027
- Kuehne+Nagel — Port operational updates(10月14日〜20日)
- MSC — Schedule Update: Trade Asia to North Europe
- MSC — PA Trade from Far East to Sub Saharan Africa and Indian Ocean
- 7news Morocco — MSC cuts shipping rates to Casablanca but adds security charges
- Maersk — Enhanced connectivity between the Western Mediterranean and West Africa
- El Estrecho Digital — Maersk reorganizes four services with West Africa
- Container News — CMA CGM announces new surcharges for Mauritius and Kenya shipments
- Container News — CMA CGM announces new peak season surcharges on Asia–Africa trades
- SCMP — Shipping giant Cosco launches new routes to ride out Iran war, climate risks
- Container News — Hapag-Lloyd introduces new SE5 service in Far East–Europe network reshuffle
- Times of Israel — Zim employees protest proposed sale to Hapag-Lloyd
- Ship & Bunker — ONE, HMM and Yang Ming’s Premier Alliance to resume Suez routing
- Cyprus Shipping News — ONE backs solar-powered clean water project in Nigeria
- Baird Maritime — HMM approves $1.6b investment in 12 containerships
- El Estrecho Digital — HMM orders eight 13,000-TEU container ships from HD Hyundai
- Container News — Yang Ming adds Tangier–Casablanca shuttle
- Logistics Manager — Yang Ming names 15,500 TEU YM Weight for MS2
- Logistics Insider — Wan Hai halts Afghan, Central Asia cargo via Pakistan ports
- Al Jazeera — US and Iran both claim control of Strait of Hormuz amid attacks on vessels
- Al Arabiya — Projectile strikes tanker west of Oman’s Bukha
本記事は、各社の公表資料および報道をもとに OCEAN FREIGHT JAPAN 編集部がまとめたものです(対象期間:2026年10月16日〜10月22日)。Drewry WCI は執筆時点で最新の10月15日発表分、港湾の滞船は Kuehne+Nagel の10月14日〜20日版を掲載しています。運賃・サーチャージの水準や適用条件は発表後に変更される場合があり、発地・貨物・契約条件によって実際の適用と異なることがあります。実務での適用可否は、必ず各船社の正式タリフおよび見積でご確認ください。